日本語日本文学演習8C(現代文学)

    《現代文学の流れをたどりつつ、画期的な作品を詳細に読む試み1》


 

講義内容

「現代文学」のはじまりにいるのは誰でしょうか? 川端康成、林芙美子、三島由紀夫、埴谷雄高、中上健次、村上龍、村上春樹、ヤンゾギル、吉本ばなな、江國香織、桜庭一樹、川上未映子またYoshiとSaori……。むずかしい、ですね。その作家がはっきりしている人よりはむしろ、はっきりせず、問いのまえで困惑してしまう人こそ、このゼミに参加してほしい。既成のどのような「たしかさ」より、現在という未知にかかわる「あいまいさ」をたいせつにする人を、歓迎します。

ここで試みるのは、「現代文学」をあらかじめ自明の対象とせず、さまざまな作品を検討するなかから、「現代文学」なるものの姿をうかびあがらせる作業です。この試みには「現代」とは? 「文学」とは? という問い直しも、同時にもとめられます。たとえば、ケータイ小説と従来の小説とのちがいはなにか、「新しい戦争」をひとまずのりきったがグローバルな経済恐慌に臨みなす術のない「帝国」は「現代文学」といったいどうかかわるのか、あるいは……。はっきりとした答えなどどこにもありません。だからこそ、みなさんの試みは、多方向にひらかれ雑音にみちた、楽しく愉快なものになるのです。「教科書のないいとなみ」の辛さと楽しさと。

春学期の7Cゼミにつながるこの8Cゼミでは、村上春樹が登場した1979年から、ケータイ小説全盛の現在までを扱います。みなさんにはまず、1小説(詩歌もふくむ創作)系、2ノンフィクション系、3文芸批評・文学理論系、4マンガ・アニメ・音楽・演劇など他ジャンルとの混成系、にわかれてグループをつくってもらいます。発表の運営はグループ内での話し合いにまかせます。

あなたの「関心、読み」を、瞬間的で孤立した「印象」にとどめず、できるだけ多くの人々(グループの人々から同時代の読者・批評家・研究者まで)の「関心、読み」と交叉させながら、きたえあげ突出させていく、それがここでの発表=報告です。とはいえ、評価の定まった、全集などテキストの整った「近代文学の作家」の作品とはことなり、いわゆる「先行研究」はありません。あなたが最初の「評価」をするのです。だからこれは、とても難しい試みであるとともに、なにかわくわくするような試みでもありますね。

(日本語日本文学演習7Cと一緒に履修することがのぞましい。講義内容・講義計画の詳細はWeb上の講義要項で)

 

×   ×   ×   ×   ×   ×

 

授業の到達目標

現代文学作品の考察と報告を通して、現代文学評論・研究の第一歩をふみだす。

 

×   ×   ×   ×   ×   ×

 

授業計画

第1回 オリエンテーション 課題・もっとも関心のある作家の最新作を「書評」する(第2回に提出し、参加者全員で回覧する)

第2回 モダン・ポストモダン・「帝国」などと文学の関係をめぐる講義

第3回 ダブル村上からライトノベル・携帯小説までの文学をめぐる講義

第4回 村上春樹の作品をめぐる発表

第5回 江国香織の作品をめぐる発表

第6回 目取真俊の作品をめぐる発表

第7回 川上未映子の作品をめぐる発表

第8回 さまざまな作品をめぐる発表その1

第9回 さまざまな作品をめぐる発表その2

第10回 さまざまな作品をめぐる発表その3

第11回 さまざまな作品をめぐる発表その4

第12回 さまざまな作品をめぐる発表その5

第13回 さまざまな作品をめぐる発表その6

第14回 さまざまな作品をめぐる発表その7

第15回 まとめ+昼休みの食事会

★以上は予定・参加者の関心によって変更の可能性あり。


<さまざまな作品とテーマの例として……>

1 村上春樹の31年を総括する――風の歌・オウム・スプートニクの恋人・海辺のカフカ

2 セックス・暴力・ドラッグのゆくえ―――村上龍・立松和平

3 差別へ/差別から―――中上健次・塩見鮮一郎

4 80年代ポストモダン小説―――島田雅彦・高橋源一郎

5 時代小説の新しい展開―――藤沢周平・隆慶一郎・安部龍太郎・町田康

6 オキナワ文学の四人の芥川賞作家―――目取真俊・又吉栄喜・東峰夫・大城立裕

7 女性作家の力―――吉本ばなな・小川洋子・多和田葉子・山本文緒・江國香織・唯川恵・角田光代・井上荒野

8 女性推理作家たち―――宮部みゆき・桐野夏生・高村薫・乃南アサ

9 ホラー作家たち――貴志祐介・岩井志麻子・小野不由美・阪東真砂子・恩田陸・乙一

10 突発的暴力派の文学―――藤沢周・町田康・阿部和重・赤坂真理

11 「日本文学」の相対化は可能か―――梁石日・リービ英雄・金城一紀

12 新しい作家たちが直面する困難について―――綿矢りさ・金原ひとみ・豊島ミホ・本谷有紀子・川上未映子

13 「壊れた世界」の言文一致体――――舞城王太郎・西尾維新・佐藤友哉

14 キャラクター萌えの競演(ライトノベル)――折原みと・桑原水菜・桜庭一樹

★以上は小説に限定した例。これに、2ノンフィクション系、3文芸批評・文学理論系、4マンガ・アニメ・音楽・演劇など他ジャンルとの混成系が加わる。

 

×   ×   ×   ×   ×   ×

 

教科書

そのつど指摘。早稲田大学国文学会発行『国文学研究』(実験実習費により教室で配布)。

 

×   ×   ×   ×   ×   ×

 

参考文献

そのつど指摘。

 

×   ×   ×   ×   ×   ×

 

評価方法

試験 0%
レポート 70%
成績評価においては、その成績をA+(優)、A(優)、B(良)、C(可)、F(不可)の五段階評価とし、C以上を合格とする。A+、A、B、Cについては、課題に対する理解度、独創的視点の有無、文章表現の巧拙を総合して判定する。
平常点評価 30%
出席回数は授業回数の三分の二以上を必要とする。
その他 0%

 

×   ×   ×   ×   ×   ×

 


戻る